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ポリエステルとポリエチレンの違いとは?用途に適した素材選びのポイントを詳しく解説

ポリエステルとポリエチレンの製品

アパレル製品を適切に選ぶためには素材選びが重要なポイントです。
素材には化学繊維も天然繊維もあり、種類や特徴が異なります。化学繊維には、ポリエステルとポリエチレンのように、似たような名前の素材もありますが、特性や用途が大きく異なります。
この記事では、ポリエステルとポリエチレンの基本的な違いと、服の素材選びのポイントを解説します。

ポリエステルとポリエチレンの基本

まずはポリエステルとポリエチレンがどのようなものか、その基本を理解していきましょう。

ポリエステルの概要

ポリエステルとは、主に石油を原料として作られた高分子物質のうち、エステル結合を持つものの総称です。 ポリエステルの一種であるポリエチレンテレフタレート(PET)も、ポリエチレンと同様に「ナフサ」を熱分解して生成される化学物質「エチレン」と「キシレン」が原料です。エチレンとキシレンのそれぞれをテレフタル酸とエチレングリコールに変換させた後、それらの化学反応によりポリエステルが製造されます。
ポリエステルには、他にもポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などの種類があり、繊維の強さ、変形しにくさ、耐薬品性などに優れているものが多いことが特徴です。ポリエステルは、1930年頃から研究が行われ、特にPETは「ペットボトル」や「衣料用繊維」として、現在の私たちの生活の中で広く使われています。

参考:高分子入門シリーズ ポリエステル|高分子 28巻 10月号(1979年)

ポリエチレンの概要

ポリエチレンは、主に石油から精製した「ナフサ」を原料に作られています。
ナフサを熱分解して生成される化学物質である「エチレン」をつなぎ合わせて、ポリエチレンが製造されます。ポリエチレンは、耐水性、耐薬品性などに優れることが特長です。また、ポリエチレンは比較的柔軟に成形できるため、代表的な使用例として、スーパーやコンビニのレジ袋や、シャンプーボトルなどがあります。

参考:石油を使わずにプラスチックを作る

服の素材としてのポリエステル/ポリエチレンの違い

ポリエステルとポリエチレンのどちらも石油から製造されますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。服の素材としてみた場合の違いをみていきましょう。

生産量の比較

日本の化学繊維用途における年間生産量は、ポリエステル繊維が14.5万トン/年に対してポリエチレン繊維が0.67万トン/年(2023年のデータ)と、圧倒的にポリエステル繊維が多くなっています。また、ポリエステル繊維は、他の三大合繊であるナイロン(6.8万トン/年)、アクリル(8.2万トン/年)と比較しても大きな生産量を占めています。
国際的にもポリエステル繊維は最も生産量の大きい繊維であり、日本が輸入している合成繊維の70%以上がポリエステルです。

参考:日本化学繊維協会 繊維ハンドブック2025

服の素材にはポリエステルの方が多い

服の素材としてもポリエステル繊維は多く使われています。
特にポリエステルの特徴である速乾性や耐久性は、服の洗濯や乾燥をする上で、お手入れのしやすさにつながります。一方で、ポリエチレンは、染色ができない点や融点が100℃前後と耐熱性に劣ることから、アパレル用途では使用用途が限られているのです。
ちなみに帝人フロンティアの「ソロテックス」は、ポリエステルの一種であるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維であり、厳密には「PET=ポリエチレンテレフタレート」とは異なります。しかし、ポリエステルの基本的な性質に加えて、形態回復性、ソフト感、クッション性、ストレッチ性のような快適な着心地につながる機能を持っています。

ポリエチレン繊維は接触冷感が特徴

ポリエチレンは繊維素材として生産量が少なく、服の素材にはあまり使われません。
ただし、ポリエチレン繊維の持つ接触冷感性を活かした素材も開発されています。地球温暖化により夏の暑さが増す中、接触冷感が特徴のポリエチレン繊維の使用量が増える未来もあるかもしれません。

帝人フロンティアの接触冷感素材「クールセンサーEX」について詳しくは下記製品ページをご覧ください。

クールセンサー ® EXについて詳しくみる

ポリエステルとポリエチレンの機能面以外の素材選定ポイント

素材を選ぶ上で機能面以外にも着目することは重要です。その観点から、ポリエステルとポリエチレンの違いを比較してみましょう。

バイオベース原料

ポリエステルとポリエチレンのいずれも、従来は石油を原料とした素材でした。
最近では、技術開発によりバイオベース原料から作成できるポリエステルやポリエチレンも認知されてきています。ポリエチレンは、サトウキビを使った発酵法や廃食用油の化学合成法を経て、100%バイオベースのポリエチレンを生産できます。
一方で、ポリエステルを合成するための2つの原料のうち、重量比で約30%を占めるエチレングリコールをバイオベースにした繊維が存在します。
例えば、帝人フロンティアの「プラントペット」は、バイオ由来のエチレングリコールを使用したポリエステル繊維です。バイオベースの割合ではポリエチレンの方が高くできますが、ポリエステルにはリサイクル原料を使った素材もあるため、用途に合わせて総合的に比較することが大切でしょう。

帝人フロンティアの植物由来ポリエステル「プラントペット」について詳しくは下記製品ページをご覧ください。

プランペットについて詳しくみる

参考:バイオプラスチックとは?

安定供給

ポリエステルもポリエチレンも原料である石油の調達リスクは同程度といえます。ただし、ポリエチレンと比べてポリエステルの繊維メーカーは国内・海外ともに大手企業が多い傾向であり、安定的な供給が期待できるでしょう。

服の素材としてポピュラーなポリエステルと独特の機能が期待できるポリエチレン

この記事では、ポリエステルとポリエチレンの化学的な違いや、服の素材としての比較、性能以外に着目すべき点などを解説しました。有用な機能を持ち幅広く服の素材として使われるポリエステルに対して、ポリエチレンは服としての用途は限定的です。しかし、ポリエチレンの接触冷感を活かした素材開発も行われています。素材の特性を正しく理解した上で、製品の用途や環境配慮といった多角的な視点から最適な選択ができるようになれば幸いです。

他にも素材の違いについて解説している記事を公開しています。是非こちらもご覧ください。

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