祐真 朋樹

Tomoki Sukezane

Special Interview
2019.04.15 Mon

01. 進む多様性。ファッションはさらに自由に

 

長年にわたり日本のファッションシーンを牽引し続けるトップスタイリスト、祐真朋樹さんにお話を伺いしました。現在のファッションについて。センスを磨くということについて。そして、素材の未来について。グローバルな目線でファッションを俯瞰し続けてきた祐真さんならではの、貴重でユニークなお話。

 

 

祐真さんの目から見て、ファッションは現在、どうなっているのか。まずは率直なご意見をお聞かせいただけますか。

 

やはり“多様化”でしょうか。これはいろいろなところで言われていることだと思うのですが、ファッションにおいてもそれは非常に顕著だと思います。例えば90年代頃までは、『今はこれがいいね』とか、『これが流行りだね』といった感じで、一つの大きな流れが割と明快にあった。ある種、わかりやすい時代でした。それ以降の00年代から少しずつ多様化が進んでいって、今では“トレンド”というものを一言では言いづらい時代になっていると思います。そんな中でも一つ挙げるとすれば、近年は“ストリート”という言葉がもてはやされていて、大きな流れになっているとは思いますね。

 

 

確かに、パリやミラノのコレクションブランドにしても、近年はだいぶカジュアルというか、ストリート化というものが進んでいるように思えます。

 

ストリート化。そうですね、つまりそれが多様化ということなのかもしれません。ラグジュアリーとされ、特定のものとされていたブランドも、今はもっと広がりを持つブランドになった。デザイナーの若返りもあると思うし、世の中の環境の変化もある。“モード”という言葉がありますが、そもそもそのモードというものも、ストリートにいる人たちの反抗心から生まれたものも多いわけですよね。そういうものが混然一体となって、今また面白いことになっているんだと思います。

 

 

祐真さんは長年、海外のコレクションも見にいってらっしゃいますが、現場のムードというのはいかがでしょう。

 

現象としてすごく変わったなと思うのは、ステージで行われているショーだけじゃなく、それを見に来てる人たち自体が主役になってきているということです。いわゆるインフルエンサーと呼ばれる人たちですね。ショーが始まる前は、多くのカメラマンがその人たちの周りに集まって撮影をする。そして即座に世界に配信される。その経済効果もすごいです。数年前にブロガーと呼ばれる人たちから始まったこの流れはインスタの普及で加速度的に進化して、今では一大イベントになっています。おそらくこの記事を読んでいただいている方の中にも、ファッションショーは見たことないけど、場外スナップは見たことあるっていう人はすごく多いんじゃないでしょうか。これはとても現代的な現象だと思いますね。

 

 

そういったことも含め、多様化が進んでいる。

 

ファッションにそういうエンターテインメント性や様々な要素がプラスされて、ファッションを超えたもっと大きな流れを生んでいる。それは、僕は面白いことだと思います。そういう意味でも、『今はこれを着るといい』とか『これがトレンドだ』とか、そういう話ではなくなっているのかもしれませんね。

 

 

では、祐真さんがスタイリングやファッションディレクションというお仕事を通して伝えたいことはどんなことでしょうか?

 

そんなに大それたことは考えていないんですが、シンプルに、格好悪いより格好いい方がいいに決まっていると思って仕事をしてきました。そもそも服なんて、今の時代、何を着ていたって許されるわけですよね。裸で走り回らない限りは自由がある。でもそこに、自分の意思みたいなものを表現できるわけです。僕らには選択肢が与えられている。例えば制服にしたって、それを自分なりにアレンジして着てみたりとかするじゃないですか。シャツを変えてみたり、パンツを腰履きしてみたり。そんな風に、ちょっとしたことに楽しみを見出せるのが、ファッションの面白さだと思うんです。その自由さと楽しさが伝わればいいなって思います。

 

祐真 朋樹Tomoki Sukezane
雑誌「POPEYE」でファッションエディターとしてのキャリアをスタート。その後スタイリスト、ファッションディレクターとして活躍。日本のファッションシーンを最前線で牽引してきた。パリとミラノのコレクション観覧歴は25年以上。自他ともに認める、モード・ファッションの伝道者。